がんが転移したらどうなる?治療法・症状・心構えをやさしく解説

がんの診断を受けたとき、多くの方が最も不安に感じる言葉のひとつが「転移」です。「転移したらもう治らないの?」「どこに広がるの?」「今の症状って、もしかして…?」と、不安や疑問は尽きません。

がんの転移は、がん細胞が最初にできた場所(原発巣)から別の臓器や組織に広がる現象を指します。これは、がんの進行の中でも重要な節目であり、治療方針や生活の質に大きく関わる要素です。

この記事では「がんの転移とはどういう状態か」から、「転移があっても治療できるケース」、「患者さんやご家族ができること」まで、医療情報と心構えの両面から、わかりやすく解説します。

「転移=終わり」ではありません。まずは正しい知識を持つことが、希望ある選択への第一歩になります。

がんの「転移」とはどういう状態か

がんの「転移」とはどういう状態か

がんについて調べていると、よく出てくる言葉のひとつが「転移」です。この言葉を聞くだけで、不安な気持ちになる方も多いと思います。でも、転移について正しく知ることで、今後どう向き合えばよいのかが見えてきます。

ここでは、「転移とは何か」「再発との違い」「どうして転移が起こるのか」を、できるだけわかりやすくお伝えします。

  • がんが“転移する”とは何が起きているのか?
  • 転移と再発はどう違うのか?
  • がんはなぜ他の場所に移るのか?

一つ一つ見ていきましょう。

がんが“転移する”とは何が起きているのか?

がんの転移とは、最初にできたがんが、体の別の場所に広がってしまうことをいいます。たとえば、大腸にできたがんが、肺や肝臓などの他の臓器にまで広がっていく――これが転移です。

転移した先にできたがんも、“もともとのがん”と同じ性質を持っています。つまり、肺に広がっていたとしても、それは「肺がん」ではなく、「大腸がんが肺に転移した状態」です。

がん細胞は、体の中を流れる血液やリンパ液に入り込んで、別の場所にたどり着く力を持っています。そして、新しい場所で根を張るように増えていきます

これが「転移」の正体です。

転移と再発はどう違うのか?

「転移」と似た言葉に「再発」がありますが、意味は違います。

  • 再発:いったん治療で見えなくなったがんが、同じ場所か近くにまた出てくることです。
  • 転移まったく別の場所にがんが広がり、新しく病巣ができることを指します。

再発と転移の違いとは?参照:一般社団法人 日本がん難病サポート協会『癌が転移してもあきらめない。転移癌が治る確率とその可能性』

たとえば、乳がんの手術を受けたあと、同じ乳房にがんが出てくるのは「再発」。それが骨や肺に現れたら、それは「転移」です。

この違いを知っておくと、医師からの説明や治療の方針も、より理解しやすくなります。

がんはなぜ他の場所に移るのか?

がん細胞には、「自分のいた場所から出て、ほかの場所に移り住む力」があります。そして、その移動にはいくつかのルートがあります。

  • 血液の流れに乗って移動する(血行性転移)
    →肝臓や肺に転移しやすいパターンです。
  • リンパの流れを通って移動する(リンパ行性転移)
    →乳がんや胃がんなどでよく見られます。
    周りの臓器にじかに広がっていく(直接浸潤)
    →胃から膵臓など、隣り合う臓器に及ぶことがあります。

がんの種類や進み方によって、どこにどのように転移するかは異なります。だからこそ、医師と一緒に「自分のがんがどういう動きをする可能性があるのか」を知っておくことが大切なのです。

がんが転移した場合の主な症状

がんが転移した場合の主な症状

がんが転移したとき、体にどのような変化が起こるのでしょうか?転移先によって症状は大きく異なり、また、人によってはほとんど自覚がないまま進行してしまうこともあります。

ここでは、部位ごとに見られやすい症状や、気づきにくいケース、さらにどのようにして転移が見つかるのかという検査の視点まで、整理してご紹介します。

  • 部位別に出やすい転移症状
  • 無症状で進行することもある?
  • どのような検査で転移がわかる?

それぞれ紹介していきます。

部位別に出やすい転移症状

がんが転移した場合、その場所によって体に現れるサインは異なります。以下は、代表的な転移部位とその際に見られやすい症状です。

  • 肺への転移
    →咳が続く、痰に血が混じる、息切れしやすいなど
  • 肝臓への転移
    →倦怠感、食欲不振、体重減少、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)など
  • 骨への転移
    →背中や腰、手足の痛み、骨折しやすくなる、しびれ感など
  • 脳への転移
    →頭痛、吐き気、視覚や言葉の障害、手足の動かしづらさ、けいれんなど

もちろん、すべての人にこれらの症状が出るわけではありませんが、いつもと違う体の感覚が続く場合は、早めに相談することが大切です。

無症状で進行することもある?

実はがんの転移は、まったく症状が出ないまま進行していることも少なくありません。特に、肺や肝臓などの臓器は“沈黙の臓器”とも言われ、ある程度まで進行しないと症状が出にくい傾向があります。

定期検査や画像診断で、「思いもよらない場所に転移が見つかる」というケースも実際によくあります。そのため、治療中や経過観察中の方は、「症状がないから安心」と思い込まず、医師の指示に従って定期的に検査を受けることが重要です。

どのような検査で転移がわかる?

がんの転移を調べる際には、次のような検査が用いられます:

  • CT検査(コンピュータ断層撮影)
    →内臓やリンパ節、骨への転移を画像で確認できます
  • MRI検査(磁気共鳴画像法)
    →脳や脊髄など、より細かい部位の異常を詳しく確認できます
  • PET検査(陽電子放出断層撮影)
    →がん細胞の活発な代謝を利用して、全身の転移を一度に調べられます
  • 骨シンチグラフィー
    →骨転移の有無を調べる検査です
  • 腫瘍マーカー(血液検査)
    →血液中の数値から、がんの再発や転移の兆候を見つける手がかりになります

症状の有無にかかわらず、こうした検査を組み合わせて判断することで、早期の転移発見につながる可能性があります。

がんの転移は治らないのか?

がんの転移は治らないのか?

「転移」と聞くと、多くの方が「もう治療はできないのでは」と感じてしまうかもしれません。たしかに、がんが他の場所に広がった状態では、治療が複雑になりやすく、完治を目指すのが難しくなるケースもあります。しかし、“治らない=何もできない”というわけではありません。

ここでは、治療が難しいとされる理由、治療可能なケース、そして「治す」だけではない治療のあり方まで、冷静に見つめていきます

  • 治療が難しいとされる理由
  • 転移があっても“治療できる”ケースとは?
  • 緩和ケアと治療のバランスの考え方

一つ一つ整理していきます。

治療が難しいとされる理由

がんの転移が治療を難しくするとされる背景には、いくつかの要因があります。

  • 複数の場所に広がっている
    →一か所のがんに対しては手術で対応できても、全身に転移がある場合は、局所治療だけでは対処しきれません。
  • がん細胞の性質が変化することもある
    →転移先では、原発のがんと違った反応を示すこともあり、効果的な薬が見つかりにくいケースもあります。
  • 体への負担が大きくなる
    →治療を続けることで体力が消耗し、副作用とのバランスを取るのが難しくなる場合もあります。

こうした理由から、「治す」ことをゴールにするのが困難になるケースもありますが、それでも「進行を遅らせる」「症状を抑える」といった治療は可能です。

転移があっても“治療できる”ケースとは?

がんが転移していても、以下のような条件がそろえば、積極的な治療が検討されることもあります。

  • 転移が限られた部位・数である(少数転移)
    →たとえば、肝臓や肺に1〜2か所だけの転移であれば、手術や局所治療が有効な場合もあります。
  • がんのタイプが治療に反応しやすい
    →一部のがんでは、分子標的薬や免疫療法などが高い効果を示すことがあります。
  • 本人の体力や臓器の機能が保たれている
    →継続的な治療が可能かどうかは、全身状態によっても判断されます。

医師とよく相談しながら、病状や生活の希望に合った選択肢を見つけていくことが、これからのがん治療ではとても重要です。

緩和ケアと治療のバランスの考え方

転移があるがんに対しては、「治すための治療」だけでなく、「つらさを和らげるための治療(=緩和ケア)」を併せて考えることが大切です。

緩和ケアとは、がんによる痛みや苦しさ、不安などを軽くし、生活の質(QOL)を保つための医療です。これは「最期のときに受けるケア」という誤解もありますが、治療と並行して早い段階から受けることができるものです。

たとえば:

  • 痛み止めを使って日常生活を快適に過ごせるようにする
  • 不安や孤独感を支えるカウンセリングや精神的サポートを受ける
  • 生活の中で困っていることを相談し、医療・介護の連携体制を整える

治療を続けること自体が心身の負担になってしまう場合もあるため、「どう生きるか」「何を優先するか」という視点も含めて、選択肢を広げておくことが大切です。

転移が見つかったときの治療選択肢

転移が見つかったときの治療選択肢

がんの転移が見つかったとき、「もう何もできないのでは」と思うかもしれません。しかし実際には、進行の程度やがんの種類によって、選べる治療の幅はさまざまです。

ここでは、現在主に使われている薬物治療や放射線・手術といった方法に加え、新たな選択肢として注目されている「臨床試験(治験)」についても触れていきます

希望の持てる治療法を見つけるためにも、まずは情報を整理しておくことが大切です。

  • 抗がん剤・分子標的薬・免疫療法の可能性
  • 放射線治療や外科手術の適用ケース
  • 臨床試験(治験)という選択肢も

一つ一つ整理していきます。

抗がん剤・分子標的薬・免疫療法の可能性

転移があるがんでは、全身に影響を及ぼす可能性があるため、全身に効く薬物治療が中心になります。

代表的なのは以下の3つです:

  • 抗がん剤(化学療法)
    →幅広い種類のがんに用いられる治療法。がん細胞の増殖を抑える薬を点滴や内服で投与します。
  • 分子標的薬
    →がん細胞だけが持つ特定の「異常な分子構造」を狙って攻撃する薬。副作用が比較的抑えられるケースもあります。
  • 免疫チェックポイント阻害薬(免疫療法)
    →体の免疫力を高めてがん細胞を攻撃するよう促す治療法。肺がん・皮膚がん・腎がんなど一部のがんで効果が報告されています。

薬物治療の種類や使い方は、がんのタイプや体調によって大きく異なります。どの治療法が自分に合っているのか、担当医としっかり話し合いながら選択していきましょう。

放射線治療や外科手術の適用ケース

転移があっても、「全身治療」と並行して局所的な治療が有効となる場合もあります。

  • 放射線治療
    →転移した場所が痛みや神経圧迫などの原因になっているときに、症状を和らげる目的で使われます。脳転移や骨転移でよく用いられます。
  • 外科手術(転移巣の切除)
    →転移の数が少ない「限局性転移」の場合、切除することで再発のリスクを下げられることもあります。
    たとえば、大腸がんが肝臓に転移したケースで、両方の病巣を手術で取り除くことが検討されることがあります。

いずれの治療も、「どこに、どれくらいの規模で転移しているか」によって判断されます。
近年は、放射線をピンポイントで当てる高精度照射や、低侵襲手術など、患者負担の少ない技術も進んできています。

臨床試験(治験)という選択肢も

もし現在の治療では十分な効果が得られていない場合、「臨床試験(治験)」に参加するという選択肢もあります。

治験とは、まだ一般に使われていない新しい薬や治療法について、安全性や効果を調べるための試験です。近年では、がんゲノム医療の進展により、患者さんの遺伝子に応じた個別化治療の研究も進んでおり、治験の内容も多様化しています。

主な特徴は以下の通りです:

  • 標準治療が効かない場合でも、新しい希望が見つかる可能性がある
  • 治験に参加するかどうかは、医師と相談しながら慎重に判断する必要がある
  • 国立がん研究センターやがん拠点病院などで情報提供を受けられる

「最後の手段」としてだけでなく、よりよい治療のチャンスとして前向きに検討する価値があります。

がんの転移に向き合うために大切なこと

がんの転移に向き合うために大切なこと

治療の選択肢を知ることは、前を向くための第一歩です。しかし、選択肢があるからこそ「どれを選べばよいのか」「本当にこれでいいのか」と迷う場面も増えていきます。

がんと向き合う日々は、治療だけでなく「どう生きていくか」「どんな時間を大切にしたいか」を見つめ直す時間でもあります。

ここでは、医師との話し合いで大切な視点、周囲の支えの整え方、そして情報の洪水に飲み込まれないための心構えについて整理していきます。

  • 医師との相談で押さえたいポイント
  • 家族・周囲のサポート体制を整えるには
  • 情報にふりまわされないための心構え

一つ一つ整理していきます。

医師との相談で押さえたいポイント

がんの転移がある場合、治療の選択肢は「ひとつではない」ことが多くなります。だからこそ、医師との対話では、次のような点を意識しておくことが大切です。

  • 「目的」を共有する
    →治療で「完治を目指す」のか、「症状をやわらげる」のか。ゴール設定は人によって異なります。
  • 納得できるまで質問する
    →「この治療のメリット・デメリットは?」「他に選択肢はあるか?」といった疑問は遠慮せずに伝えましょう。
  • セカンドオピニオンも視野に
    →別の医師の意見を聞くことで、新たな気づきや納得感につながることがあります。

一方的に説明を受けるだけでなく、「自分や家族の考えを伝える場」として、診察時間を有効に使うことが重要です。

家族・周囲のサポート体制を整えるには

転移があるがんと向き合うには、医療だけでなく生活面や心の支えも不可欠です。家族や周囲とどのように連携を取るか、次のようなポイントが参考になります。

  • 「何をしてほしいか」を言葉にする
    →たとえば「病院への付き添いだけでなく、話を聞いてほしい」「治療内容は自分で決めたい」など、本人の気持ちを明確にしておくと、周囲も動きやすくなります。
  • 頼れる人・制度を整理する
    →医療ソーシャルワーカーや地域包括支援センター、訪問看護など、医療と生活をつなぐ支援も活用しましょう。
  • “がんの話ばかりになりすぎない”距離感も大切
    →ふだん通りの会話や時間を大切にすることで、心の負担が軽くなることもあります。

一人で抱え込まず、「チーム」で向き合う姿勢が、治療や生活の質を保つカギになります。

情報にふりまわされないための心構え

インターネットにはがんに関する情報が溢れていますが、それが逆に不安をあおる原因になることもあります。
大切なのは、情報を正しく選び、自分のペースで向き合うことです。

  • 「誰に向けた情報か」を見極める
    →すべての人に当てはまる内容ではないため、主治医の見解と照らし合わせることが基本です。
  • 「情報=判断材料の一つ」と捉える
    →情報は意思決定のためのヒントであって、決断のすべてではありません。
  • 一度離れる勇気も大切
    →情報を追い続けることに疲れたら、いったん画面を閉じて深呼吸する時間も必要です。

「今の自分に必要な情報だけを見る」と決めることで、心の混乱を減らすことができます。

よくある質問|がんの転移に関する疑問に答えます

よくある質問|がんの転移に関する疑問に答えます

Q1.がんが転移したら、もう治療はできないのでしょうか?
A.状況によっては治療が可能です。転移の数や場所、がんの種類、体力などによっては、薬物療法や手術、放射線治療が行えるケースもあります。医師と相談しながら、自分に合った治療法を見つけましょう。

Q2.転移と再発はどう違うのですか?
A.再発は「元の場所にがんが戻ってくる」こと、転移は「他の臓器にがんが広がる」ことです。それぞれ治療方針も異なるため、しっかり区別して理解しておくことが大切です。

Q3.転移があるがんは、どんな症状が出るのですか?
A.転移先によって症状はさまざまです。たとえば、骨なら痛みや骨折、肺なら咳や息切れ、脳なら頭痛やけいれんなどがあります。ただし、無症状で進行することもあります。

Q4.検査で異常がなくても、転移の可能性はある?
A.画像検査で見つからないほど小さな転移もあります。そのため、定期的な検査や経過観察が大切です。不安な症状があれば、医師に相談して検査を追加することもできます。

Q5.治療はつらいですか?副作用が心配です。
A.副作用には個人差がありますが、最近は副作用を軽減する薬も進歩しています。つらいときは我慢せず、医師や看護師に相談すれば、調整や対処法を提案してもらえることが多いです。

Q6.緩和ケアって“もう治療しない”という意味ですか?
A.いいえ、緩和ケアは、「がんを治す治療」と並行して受けられるものです。痛みや不安をやわらげ、よりよく生活するためのサポートです。早い段階から受けることで生活の質が保たれます。

Q7.家族として、どんなサポートができるのでしょうか?
A.本人の気持ちを尊重しながら、無理のない範囲でできることを話し合うことが第一歩です。病院への付き添いや、話を聞くことも大切なサポートです。困ったときは医療スタッフにも相談してみてください。

Q8.インターネットの情報が多すぎて、何を信じればいいのかわかりません。
A.信頼できる医療機関や、がん専門の公的サイト(例:国立がん研究センター)などの情報を中心に見るようにしましょう。不安になったら、主治医に「この情報は自分に当てはまるか」を確認するのがおすすめです。

まとめ|がんの転移と向き合う人が“知っておきたい”こと

まとめ|がんの転移と向き合う人が“知っておきたい”こと

がんの転移という言葉に、不安や恐怖を感じるのは自然なことです。しかし、転移があるからといって「すべての可能性が閉ざされる」わけではありません

転移のメカニズムや治療の選択肢を知ることで、自分や大切な人の命とどう向き合うか、どんな時間を過ごすかを考えるヒントが見えてきます。

この記事でお伝えしたように、

  • 転移があっても治療できるケースはあります
  • 痛みや不安をやわらげるケアも進んでいます
  • 情報は取捨選択しながら、自分のペースで整理していくことが大切です

そして何より、「一人で抱え込まないこと」が大切です。医療者や家族、周囲の人の力を借りながら、“自分らしい選択”を重ねていくことが、がんと向き合ううえでの大きな支えになります。

希望を手放さず、必要なときには立ち止まりながら、あなたのペースで進んでいきましょう。

 

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