白血病の治療とこれからの生活|再発予防・日常管理までわかる総合ガイド
白血病と診断されると、だるさ・出血・発熱といった症状に加え、「これからどんな治療を受けるのか」「普段の生活はどうなるのか」と不安に押しつぶされそうになることもあります。ご本人だけでなく、ご家族も「どう支えればいいのか」と悩むことは少なくありません。
しかし近年、白血病の治療は大きく進歩しており、入院や通院を続けながらも日常生活や仕事を両立しやすくなっています。薬の種類や治療法の選択肢も増え、より生活に合わせた治療が可能になってきました。
執筆者は、大学病院の血液内科で看護師として白血病患者さんのケアに携わってきました。診断直後の不安や疑問に寄り添い、ご家族の葛藤にも向き合ってきた経験をもとに、この記事を書いています。
本記事では、白血病の治療方法・日常生活の工夫・再発予防について、できるだけわかりやすく解説します。少しでも不安を和らげ、納得できる選択のサポートになれば幸いです。
白血病の症状・検査についての記事はこちら
はじめに|白血病とはどんな病気か

はじめに|白血病とはどんな病気か
白血病は、血液や骨髄の中でつくられる血球に異常が起きることで発症する血液のがんで、だるさ・発熱・出血しやすい・貧血などの症状が現れます。大きく「急性白血病」と「慢性白血病」に分かれ、症状や進行のスピードは種類によって異なります。
近年は治療法が進歩し、薬の種類や治療の選択肢も広がってきました。そのため、診断を受けたあとも生活を続けながら治療を受ける方が増えています。
白血病の治療方法

白血病の治療方法
白血病と診断されたあとに気になるのは、「どんな治療法があるのか」「自分や家族の病気は治るのか」といった点ではないでしょうか。治療は、白血病の種類、病気の進行度、そして患者さんの体の状態や希望に応じて決まります。医師と相談しながら、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
ここでは、急性白血病と慢性白血病の基本的な治療の流れから、骨髄移植とその生活への影響、さらに治療中の生活を支える工夫まで、主な選択肢をわかりやすく解説します。
- 急性白血病の治療の流れ(寛解導入療法・地固め療法・維持療法)
- 慢性白血病の治療の流れ(薬物療法・経過観察)
- 骨髄移植について(流れ・副作用・入院期間)
- 治療中の生活とサポート(入院・通院の注意点、支援体制)
それぞれの治療について、順にご紹介していきます。
急性白血病の治療の流れ(寛解導入療法・地固め療法・維持療法)
急性白血病と診断されたあと、治療は白血病の細胞を減らし、再発を防ぐために段階を追って行われます。年齢や体の状態、白血病の種類によって治療内容は変わりますが、一般的な流れは次の通りです。
1.寛解導入療法(入院:約2〜4週間)
・目的:血液中の白血病細胞をできるだけ早く減らし、血液の働きを回復
・方法:複数の抗がん剤を組み合わせて使用
・生活への影響:
・強い抗がん剤による吐き気、脱毛
・感染症リスクが高まるため、外出や接触に注意
・医療スタッフによる副作用管理あり
2.地固め療法(入院:約1〜2週間)
・目的:残った白血病細胞を減らして再発防止
・方法:追加の抗がん剤。場合によって骨髄移植(造血幹細胞移植)も検討
・生活への影響:
・体力消耗、感染症リスク
・高用量抗がん剤の場合はさらに副作用が強くなることも
・十分な休養が必要
3.維持療法(通院:数か月〜数年)
・目的:寛解状態を長期間維持
・方法:通院で低用量抗がん剤を使用
・生活への影響:
・日常生活はほぼ制限なし
・定期的な血液検査で治療量や期間を調整
<副作用の注意>
抗がん剤による副作用は個人差があります。つらい症状が出たときは、遠慮なく医師や看護師に相談しましょう。
慢性白血病の治療の流れ(薬物療法・経過観察)
慢性白血病は進行がゆっくりで、症状が出にくいこともあります。そのため、治療は病気の進み具合や患者さんの体調に合わせて行われます。主な流れは以下の通りです。
1.薬物療法(通院中心/場合によって入院)
・目的:白血病の進行を抑え、健康な状態を長期に維持
・方法:
①CML(慢性骨髄性白血病):分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬)
②CLL(慢性リンパ性白血病):必要に応じて抗がん剤や抗体治療
・入院の有無:
・基本は通院で治療
・初回投与や副作用が強い場合は入院して観察
・期間:数年単位で継続
・生活への影響:
・日常生活はほぼ制限なし
・毎日の服薬を忘れないことが重要
・定期的な血液検査で効果や副作用を確認
2.経過観察(通院・定期検査)
・目的:病気の進行や再発の兆候を早く発見
・方法:通院で血液検査や遺伝子検査を実施
・頻度:病状に応じて、週1回〜数か月に1回
・生活への影響:
・症状がなくても検査は継続
・体調の変化があれば早めに医師へ相談
・症状が安定していれば生活への影響は少ない
骨髄移植の概要と生活への影響(流れ・副作用・入院期間)
骨髄移植(造血幹細胞移植)は、白血病やリンパ腫などの血液のがんに対する治療法の一つです。患者さんの造血機能を回復させ、長期的な寛解(病気が落ち着いた状態)を目指します。
- 移植の流れ
(1)移植前処置
・目的:患者さんの骨髄を一時的に抑制し、移植される細胞が定着しやすくする
・方法:高用量の抗がん剤や放射線治療
・特徴:体への負担が大きく、副作用が出やすいため入院して管理される(2)造血幹細胞の移植
・目的:健康な造血幹細胞を体に入れ、血液を作る働きを回復させる
・方法:ドナーから採取した造血幹細胞を点滴で注入
・ドナー:血縁者または骨髄バンクから選ばれる(3)移植後の回復期
・目的:移植された細胞が体に定着するのをサポート
・方法:感染症や出血のリスクが高いため、厳重な感染管理と医療管理を実施
・期間:数週間〜数か月にわたり入院し、定期的に血液検査を行う
- 入院期間と生活への影響
(1)入院期間:移植前処置から回復まで通常は数か月(2)生活の変化:
・外出や面会は制限される
・食事や衛生管理に特別な配慮が必要
・回復期は感染リスクが高いため、無菌室で過ごすことがある(3)退院後:
・免疫力がまだ低いため、感染症予防や体調管理が重要
・定期的な通院で血液検査や診察を受ける
- 主な副作用と合併症
| 移植片対宿主病(GVHD) | ドナーの免疫細胞が体を攻撃して起こる炎症 | 皮膚・肝臓・消化管に症状が出る場合がある |
| 感染症 | 免疫力低下により細菌・ウイルス・真菌に感染しやすい | 発熱・体調不良などが出たらすぐ医師に相談 |
| 口内炎・消化器症状 | 抗がん剤・放射線の副作用で、口内炎・吐き気・下痢・食欲不振など | 症状に応じて医師に相談 |
| 晩期障害 | 移植後数か月〜数年で現れる可能性 | ホルモン異常、骨密度低下、二次がんのリスクなどがある |
骨髄移植は、白血病の治療で非常に重要な方法ですが、治療中や退院後の生活には注意が必要です。医師や看護師、ソーシャルワーカーと連携して、安心して治療を受けることが大切です。
治療中の生活管理とサポート(入院・通院の注意点・サポート体制)
白血病の治療中は、副作用や感染リスクへの対策が欠かせません。ここでは、入院中・通院中のポイントと、生活リズムの工夫についてまとめます。
1.入院中の注意点
・副作用が出たときは我慢しない
吐き気・口内炎・下痢・便秘などの症状が出ることがあります
→ 遠慮せず、すぐに看護師や医師に伝えてください。
・感染症予防を徹底する
手洗い・うがい・マスク着用を心がけましょう。
・体力の維持
無理のない範囲で、短時間でも歩くなど軽い運動を取り入れると回復につながります。
2.通院時の注意点
・体調の変化を記録する
症状をメモしておくと、診察時に正確に伝えられます。
・感染を避ける工夫
公共交通機関では人混みを避け、必ずマスクを着用しましょう。
3.生活リズムの工夫
・治療中は「規則正しい食事・睡眠」を守るのが難しいことがあります。
・無理に頑張らず、体調が良いときに食べ、眠れるときに休むことが大切です。
4.食事の注意点
・治療中は免疫力が下がるため、生ものや感染リスクのある食品は避けましょう。
・食べて良いか迷うときは、必ず看護師や医師に確認してください。
5.サポート体制
・医療スタッフ:医師・看護師・薬剤師・リハビリスタッフが連携し、治療や副作用の管理、体力の回復をサポートします。
・ソーシャルワーカーや相談窓口(病院内):治療費、仕事や学校との両立、家族のサポートなどについて相談できます。
・心理士(病院内)や患者会・支援団体:心理的なサポートや情報交換が可能です。患者会では同じ経験をした人の体験談を聞けるのも心強いポイントです。
大学病院で患者さんをサポートしてきた経験からも、「我慢しないで伝えること」「自分のペースで休むこと」が安心して治療を続ける一番のコツです。ちょっとした症状や不安でも、遠慮せずスタッフに相談してください。
日常生活で気をつけること

日常生活で気をつけること
白血病の治療中や治療後は、「体調を崩さないか」「普段の生活はどうすればいいのか」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。免疫力や体力が低下しやすいため、日常生活の工夫が再発予防や合併症の回避につながります。
ここでは、治療を続けながら安心して生活を送るために意識したいポイントを、次の3つに分けて解説します。
- 感染予防と体調管理の工夫(手洗い・マスク・体調チェック)
- 食事・休養・運動のポイント(栄養バランス・睡眠・軽い運動)
- 仕事・学校・家事との両立方法(職場との調整・休暇・家事分担)
それぞれ順にご紹介していきます。
感染予防と体調管理の工夫(手洗い・マスク・体調チェック)
治療中は免疫力が下がるため、日常の感染対策がとても大切です。小さな工夫で体調を守りましょう。
手洗い・うがい・マスク
・外出先から帰ったら必ず手洗い・うがい
・人混みに出るときはマスクを着用
体調チェック
・発熱や風邪の症状があれば無理せず休む
・気になる症状はすぐ医師に相談
食事・休養・運動のポイント(栄養バランス・睡眠・軽い運動)
体力を維持するために、食事・休養・運動のバランスを意識しましょう。
食事の注意
・生ものや加熱不足の食品は避ける
・消化に良く、体調に合わせて少しずつ摂る
休養・睡眠
・体調に合わせて休む
・就寝前にリラックスする時間を持つ
運動
・散歩や軽い運動で体力を維持
仕事・学校・家事との両立方法(職場との調整・休暇・家事分担)
治療と普段の生活を無理なく両立するには、周囲のサポートも大切です。
職場・学校の調整
・治療スケジュールに合わせて休暇を取得
・無理のない範囲で勤務や通学を
家事の工夫
・水回りの掃除や生ものを扱う調理は家族に任せる
・できる範囲で生活を支える体制を整える
再発予防と定期検診

再発予防と定期検診
白血病の治療が一段落したあと、多くの方が不安に思うのが、「再発しないだろうか」「再発を早く見つけるにはどうしたらいいのか」という点ではないでしょうか。白血病は治療後も再発の可能性があるため、薬の継続や生活習慣の工夫、そして定期的な検診でのチェックがとても重要です。
ここでは、再発予防と安心した生活のために意識したいポイントを、次の3つに分けてご紹介します。
- 再発を防ぐための治療と生活習慣(薬の継続・生活リズム・感染予防など)
- 定期検診でチェックする項目(血液検査・骨髄検査・体調の確認)
それぞれ解説していきます。
再発を防ぐための治療と生活習慣(薬の継続・生活リズム・感染予防)
白血病の治療後も、再発を防ぐためには「治療の継続」と「生活習慣の工夫」が大切です。日常生活の工夫に加えて、再発予防という視点で意識しておきましょう。
1.薬の継続
・維持療法などの内服薬は、再発予防のために重要です。
・副作用があっても自己判断で中断せず、必ず医師の指示に従いましょう。
2.生活リズム
・十分な睡眠・バランスの良い食事・適度な運動で免疫力と体力を維持しましょう。
・無理をせず、自分の体調に合わせて生活リズムを整えましょう。
3.感染予防
・感染そのものが再発を直接引き起こすわけではありませんが、感染により治療や薬の中断が起こると再発リスクが高まります。
・手洗い、マスク、人混みを避けるなど、基本的な感染対策を続けましょう。
4.禁煙
・喫煙は免疫力を低下させ、体調回復の妨げになります。
・再発予防のため、治療後も禁煙を徹底しましょう。
5.栄養管理
・消化に負担の少ない食材を選び、体調に合わせて無理なく食べることが大切です。
・栄養バランスを整えることで免疫力や体力を維持し、再発リスクを下げるサポートになります。
定期検診でチェックする項目(血液検査・骨髄検査・体調の確認)
白血病は治療後も再発のリスクがあり、長期的に体調管理や生活習慣の工夫が大切です。再発を防ぐためには、薬の継続や規則正しい生活、定期的な検査を行うことが特に重要です。
1.血液検査
・白血球・赤血球・血小板の数を測定
・数値が減っている場合、再発や感染症、治療の影響をチェック
・家でも体調に変化があったら、メモして医師に伝えると診察がスムーズ
2.骨髄検査
・必要に応じて骨髄の細胞を採取
・血液検査では見つけにくい白血病細胞の増加を確認
・痛みや不安がある場合は、検査前に医師や看護師に相談
3.体調の確認
・倦怠感、発熱、出血、感染症の症状など日常生活の変化をチェック
・小さな症状でも早めに医師に伝えることで、再発の兆候や合併症への対応が可能
まとめ|正しい情報で安心し、前向きに生活するために

まとめ|正しい情報で安心し、前向きに生活するために
白血病の治療や経過を前に、不安や迷いを感じる方は少なくありません。「どの情報を信じていいのか」「治療や生活の選択はどうすればよいのか」と悩むこともあるでしょう。
重要なのは、治療や生活に関する正しい情報を手に入れ、それをもとに自分に合った判断をしていくことです。治療法や薬、生活習慣の工夫、定期検診の継続など、できることを理解し、一歩ずつ実践していくことが再発予防や体調管理につながります。
治療中は体調の変化が出やすく、感染予防や栄養管理なども意識する必要がありますが、すべてを完璧にこなす必要はありません。医療スタッフや相談窓口、心理士など、頼れるサポートを活用しながら、無理のない範囲で日常生活を整えていくことが大切です。
白血病治療の選択肢は進歩しており、情報や支援も広がっています。本記事が、治療や生活に向き合う際の判断の参考となり、少しでも安心して前に進む手助けになれば幸いです。
※本記事は医療専門ライターによる寄稿であり、診療行為・医師の個別見解を示すものではありません。治療に関するご不安は、必ず主治医にご相談ください。
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