抗がん剤の副作用|症状別の対応と家でできる管理のコツ
がんと診断され、抗がん剤治療を受けることになったときは、体の変化や治療のことだけでなく、毎日の生活や仕事、学業、家族との関わりまで、何から手をつけてよいのか分からず、不安や戸惑いでいっぱいになることでしょう。
「副作用って何がでるのかな…」「日常生活や仕事は続けられるのだろうか…」「家族に迷惑をかけたくない…」こうした悩みは、診断直後の患者さんやご家族にとって自然な反応です。
本記事の執筆者は、大学病院で看護師としてがん患者さんのケアに携わってきた医療専門ライターです。診断直後の患者さんやご家族と接する中で、「副作用にどう対応すればよいのか」「治療中の生活をどう調整すれば安心か」といった不安に寄り添ってきました。
この記事では、抗がん剤治療で起こりうる副作用の種類や症状ごとの対応策、日常生活でできる工夫まで、実際に役立つ情報を分かりやすく解説します。読んでいただくことで、少しでも不安を和らげ、今日からできる小さな工夫を通して、無理なく安心して治療に向き合うヒントをお届けします。
目次
抗がん剤治療とは?|目的と治療の流れを知ろう

抗がん剤治療とは?|目的と治療の流れを知ろう
診断を受けたばかりの頃は、「抗がん剤治療ってどんなものだろう」「治療と日常生活をどう両立すればいいのか」と戸惑うことが多いものです。体調の変化や治療スケジュールに不安を感じるのも自然なことです。
ここでは、そんな不安に少しでも寄り添いながら、抗がん剤治療の基本について分かりやすく解説していきます。まずは、抗がん剤治療がどのような役割を持ち、どのように進められるのかを見ていきましょう。
抗がん剤治療の役割と進め方
抗がん剤治療は、がんの増殖を抑えたり、進行を遅らせたりする薬を使った全身の治療です。手術や放射線が体の一部だけに働きかけるのに対し、抗がん剤は体全体に効果を期待できるため、転移のある場合や、再発を防ぐため、がんが広がるのを抑えたい場合などに行われます。
治療は人によって異なります。抗がん剤だけで行うこともあれば、手術や放射線と組み合わせて治療することもあります。また、複数の薬を組み合わせることで、それぞれの薬の特徴を生かし、より効果を高めることができます。
初めて治療を受けるときは、不安や疑問がたくさんあるのは当然です。どの薬を、どのタイミングで使うのか、体にどんな変化が起こるのかを医師や看護師と一緒に確認しながら進めることで、少しずつ安心して治療に向き合えるようになります。
抗がん剤の副作用と対応|症状ごとの対策を知ろう

抗がん剤の副作用と対応|症状ごとの対策を知ろう
抗がん剤治療では、がん細胞とともに正常な細胞にも影響が出るため、副作用が起こることがあります。「つらい症状が出たらどうしよう…」と不安に感じる方も多いですが、今は副作用を軽くしたり、うまく付き合ったりする方法がたくさんあります。
ここでは、よく見られる症状と、その対策についてわかりやすく紹介します。
- 口内炎|食事や口腔ケアで痛みをやわらげる
- 脱毛|心の準備と帽子・ウィッグでできる工夫
- 吐き気・嘔吐|薬や生活習慣で負担を軽減する方法
- 倦怠感・疲れやすさ|無理せず休むタイミングと日常の工夫
- 感染症リスク|手洗いや生活環境の工夫、看護師のサポート活用
症状の感じ方や出方は人それぞれです。自分の体と向き合いながら、医療者と一緒に“あなたに合った乗り越え方”を見つけていきましょう。
口内炎|食事や口腔ケアで痛みをやわらげる
抗がん剤の影響で、口の中の粘膜が傷つき、口内炎が出てくることがあります。原因は、口の乾燥や清潔不足、免疫力の低下、栄養状態の乱れなどです。
予防の基本は、口の中を清潔に保つことです。
・柔らかい歯ブラシで1日3回ていねいに磨く
・朝・食前後・寝る前など、1日7〜8回うがいをする
口腔内の腫れや痛みが強いときは、医師から処方される抗炎症作用のあるうがい薬や、 痛みを和らげる成分を含むうがい薬を使用することがあります。また、おかゆ・スープ・ヨーグルトなど、刺激の少ない柔らかい食事を選ぶと、食事が少しラクになります。
無理せず、つらいときは我慢しないで医師や看護師に相談しながら、できる範囲でケアを続けていきましょう。
脱毛|心の準備と帽子・ウィッグでできる工夫
抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも作用するため、脱毛が始まることがあります。髪の毛だけでなく、まゆ毛やまつ毛が抜けることもあり、外見の変化に戸惑う方も少なくありません。
でも、少し準備をしておくことで、心の負担を軽くすることができます。
・髪を短めに整えておくと、抜け始めのショックが少なくなり、抜け毛の掃除もしやすくなる
・ウィッグや帽子、スカーフを事前に試してお気に入りを見つけておく
治療が終わると、半年〜1年ほどで髪は少しずつ生えてきます。見た目の変化に不安を感じたときは、無理せず看護師やサポートスタッフに相談してみましょう。自分らしさを大切にしながら、焦らずゆっくり進んでいけば大丈夫です。
吐き気・嘔吐|薬や生活習慣で負担を軽減する方法
吐き気や嘔吐は、抗がん剤治療でよく見られる副作用です。現れ方には、以下の3つがあります。
- 治療後すぐに起こる「急性の吐き気」
- 治療前の不安などで起こる「予測性の吐き気」
- 数日後に続く「遅発性の吐き気
多くの場合、治療前に吐き気止め(制吐剤)を点滴で予防します。それでもつらいときは、追加で薬を使うことも可能です。症状は我慢せず、医師や看護師に相談し、適宜吐気止めも使っていきましょう。日常でできる工夫は以下の通りです。
- 食事の30分前に吐き気止めを内服する
- 換気をしてにおいを減らす
- ゼリーやプリン、アイスなど口当たりの良い食べ物を少しずつ摂る
つらいときは無理に食事をとらなくても大丈夫です。食べられるときに食べられるものを少しずつ、水分や塩分も忘れずに補いながら、自分のペースで過ごしましょう。
倦怠感・疲れやすさ|無理せず休むタイミングと日常の工夫
抗がん剤治療では、倦怠感や疲れやすさを感じ、治療終了後も続くことがあります。普段の疲れとは違い、少し休んでもすぐには回復せず、「体がついてこない…」と戸惑うこともあるでしょう。
無理をせず、自分の体調と向き合うことが大切です。例えば、
- 活動できそうなときに、家事や軽い運動を少しずつ行う(椅子に座っての足踏みや短時間のストレッチなど)
- 倦怠感が強いときは、思い切って休む
- 活動と休息のバランスを意識して、一日の予定を調整する
倦怠感は長く続くこともありますが、少しずつ体を動かすことが回復の助けになります。焦らず、自分のペースで過ごすことで、体も心も少しずつ楽になっていきます。
感染症リスク|手洗いや生活環境の工夫、看護師のサポート活用
抗がん剤治療では、骨髄抑制により白血球・赤血球・血小板が減少することがあります。特に白血球は体を感染症から守る役割があるため、減少すると感染しやすくなります。感染症リスクは治療開始から1〜2週間後に高まることが多く、徐々に回復していきます。
感染症を防ぐためには、日常生活での工夫が大切です。例えば、
- 手洗いうがいをこまめに行う
- 外出時はマスクを着用する
- 人混みや混雑した公共交通機関を避ける
- シャワーや入浴で清潔を保つ
また、発熱など体調に少しでも異変を感じたら、我慢せず早めに医師や看護師に相談することが安心につながります。無理をせず、自分の体調を優先しながら生活することが、感染症の予防にもつながります。
副作用が出たときの対応|安心して乗り越えるためのポイント

副作用が出たときの対応|安心して乗り越えるためのポイント
抗がん剤治療では、さまざまな副作用が起こることがあります。「これって普通なのかな…?」「どう対応すればいいの?」と不安に感じるのは自然なことです。副作用は放置せず、早めに気づいて対応することが、治療を安心して続けるための大切なポイントです。
ここでは、日常生活の中で無理なく取り組める方法をまとめました。
- 副作用の変化を見逃さない|症状チェックと簡単な記録のコツ
- 迷ったらすぐ相談|看護師や医師に伝えるタイミング
- 家でできるケアと日常サポート|痛みや不快感を和らげる工夫
これらを知っておくことで、つらい症状も少しでも和らげ、安心して治療に臨むことができます。
副作用の変化を見逃さない|症状チェックと簡単な記録のコツ
抗がん剤の副作用は人によって出方が異なります。だからこそ、日々の体調の変化に気づくことが大切です。
無理なく続けられる方法として、簡単に記録をとってみましょう。メモするポイントは次の通りです:
- 症状の内容:吐き気、口内炎、倦怠感など
- 症状の強さ:軽い・中くらい・つらいなど
- 症状が出た時間:朝・昼・夜、具体的な時間でもOK
- 食事や薬との関係:何を食べたあと、薬を飲んだあとに変化があったか
こうしておくと、症状の変化がわかりやすくなり、医師や看護師に伝えるときにも役立ちます。記録は紙でもスマホでも構いません。毎日少しずつ書き留めるだけでも、体調管理がぐっとラクになり、安心感につながります。
迷ったらすぐ相談|看護師や医師に伝えるタイミング
抗がん剤治療中は、体調の変化や副作用が人それぞれで、同じ症状でも程度や出るタイミングが異なります。だから、「これくらいなら大丈夫かな…?」と迷ってしまうこともあるでしょう。
しかし、副作用は早めに対処することで、症状を和らげたり、治療を安全に進めたりすることができます。少しでも不安や違和感を感じたら、遠慮せずに医師や看護師に相談してください。
特に次のような症状がある場合は、迷わず連絡しましょう。
- 高熱や寒気、体温の急な変化
- 出血やあざが急に増えた場合
- 強い吐き気や嘔吐、食事がとれないとき
- 激しい倦怠感やめまい、呼吸のしづらさ
- いつもと明らかに違う体調の変化
相談することで、必要に応じた薬の調整や応急処置を早く受けられます。症状を我慢せず、安心して治療を続けるための大切なステップと考えてください。
家でできるケアと日常サポート|痛みや不快感を和らげる工夫
抗がん剤治療中は、吐き気や口内炎、体のだるさなどの「痛みや不快感」が続くこともあります。そんなときは、できる範囲で体を休め、少しでも楽に過ごせる工夫を取り入れてみましょう。
休息は、必ずしも長時間眠ることだけではありません。横になったり、椅子に座って目を閉じたりするだけでも、体は回復に向かいます。また、無理のない範囲でできる工夫もおすすめです。
- 食べられるときに、食べられるものを少しずつ口にする
- 体調がよい時間帯に、軽いストレッチや散歩をする
- 口内炎がある場合は、刺激の少ない食事(おかゆ・スープなど)を選ぶ
- 室温や服装を整えて、心地よい環境で過ごす
治療中は「頑張らなきゃ」と思うこともあると思いますが、完璧を目指す必要はありません。少しでも体が楽になる過ごし方を見つけて、自分のペースで毎日を整えていきましょう。
日常生活でできる副作用の管理|今日から取り入れられる工夫

日常生活でできる副作用の管理|今日から取り入れられる工夫
抗がん剤治療中は、体の変化に戸惑うことも多いですが、少しの工夫で日常生活がぐっと過ごしやすくなることがあります。
ここでは、無理なく続けられる“日常の中のケア”を、やさしく解説していきます。
- 食事や水分、生活習慣の工夫
- 家族ができるサポートの具体例
- 看護師からのアドバイスを活用するポイント
こうした身近な工夫を知っておくことで、「自分にできること」が少しずつ増え、治療との向き合い方にも余裕が生まれます。
食事や水分、生活習慣の工夫
抗がん剤治療中は、吐き気や口内炎、だるさなどで普段通りの生活が難しいことがあります。無理せずできる範囲で、次の工夫を取り入れましょう。
- 食べられるときに、食べられるものを少しずつ
温かい料理の匂いがつらいときは冷ましたり、冷たいものに変えたりする。 - 口内炎や乾燥があるときは刺激の少ない食べ物
おかゆ、ゼリー、プリン、豆腐などを選ぶ。辛味や酸味は避ける。 - こまめな水分補給
白湯や麦茶、スポーツドリンクを少しずつ。吐き気があるときは氷やストローを使うのも良い。 - 感染予防
手洗い・うがい・マスク、人混みを避ける。食事前や外出後は口の中を清潔に。 - 体調が良いときに軽い運動
ストレッチや短時間の散歩で体力維持。無理はしなくてOK。
家族ができるサポートの具体例
抗がん剤治療中は、体調が不安定になりやすく、家族のサポートがあると生活がぐっと過ごしやすくなります。
- 通院の付き添いや送迎
治療前後は疲れやすいため、病院への送り迎えや付き添いがあると安心です。 - 食事の準備や買い出し
食欲がないときや調理が負担になるときは、簡単に食べられるものを用意したり、買い物を代わりに行ったりする。 - 家事や子どもの世話
掃除や洗濯、子どもの送迎や遊びのサポートなど、日常の負担を軽くしてあげる。 - 気持ちのサポート
「無理しなくていいよ」と声をかけたり、話を聞いたりして安心感を与える。 - 体調観察の補助
熱や体調の変化に気づきやすくなるため、記録や変化の確認を手伝うのも役立ちます。
家族が少しサポートするだけで、本人は安心して休むことができ、治療との両立もしやすくなります。
看護師からのアドバイスを活用するポイント
抗がん剤治療中は、体調の変化や副作用で「これって大丈夫かな…?」と不安になることもありますよね。そんなとき、看護師は少しでも日常を過ごしやすくする工夫や、症状を和らげる方法を伝えることができます。
- 薬の使い方を確認する
吐き気止めなどの薬は種類や効果の出方が人それぞれです。自分に合ったタイミングや使い方を一緒に確認して、少しでも楽に過ごせるようにしましょう。 - 小さな変化も遠慮なく相談する
「なんとなく気分が悪い」「熱はないけどだるい」など、些細なことでも大丈夫です。話してもらうことで、無理なく過ごすための工夫ができます。 - 迷ったときは頼ってOK
すべてを報告する必要はありません。ちょっとした不安や疑問も、相談することで安心につながります。
医師には相談しづらいことや、心理士に話すほどでもない…そんな小さな不安も、遠慮せず看護師に気軽に声をかけてみてください。ちょっとした工夫で、毎日の過ごしやすさがぐっと変わることもあります。
まとめ|副作用に負けず、今日からできる工夫で治療を前向きに進めよう

まとめ|副作用に負けず、今日からできる工夫で治療を前向きに進めよう
抗がん剤治療中は、「体がだるい」「気持ちが沈む」「副作用がつらい」と感じる日もありますよね。これがずっと続くのかなと不安になることもあると思います。でも、それを感じるのは自然なことです。
副作用には、一時的に出るものから長期に続くものまでさまざまがあります。そのため、少しずつ自分に合った工夫を取り入れることが、日常の負担を和らげる大きな助けになります。
たとえば、
・食べられるときに、口当たりの良いものや少しずつでも食べる
・体調が悪いときは無理せず横になったり、休憩をこまめにとる
・吐き気やだるさ、気持ちの落ち込みなど、気になる症状は看護師に相談する
こうした小さな工夫でも、体の負担が減り、心に少し余裕が生まれます。大切なのは「完璧を目指さないこと」です。今日はできなくても、明日にはできることがあるかもしれません。副作用と向き合いながらも、自分のペースを大切に少しずつ前に進む――その積み重ねが、治療を乗り越える力になります。
※本記事は医療専門ライターによる寄稿であり、診療行為・医師の個別見解を示すものではありません。治療に関するご不安は、必ず主治医にご相談ください。
