元看護師が答える がん治療の不安Q&A【手術編】

がんの治療で手術が必要になったとき、「手術中って意識はあるの?」「痛みはどれくらい?」「退院までどのくらいかかるの?」と、わからないことや不安が次々に浮かんでくるものです。

本記事の執筆者は、これまでがん患者さんとご家族のサポートに携わってきた経験を持つ医療専門ライターです。本記事では、医療現場で多くの患者さんやご家族を支えてきた経験をもとに、手術に関してよく聞かれる質問をQ&A形式でやさしく解説します

手術の流れや痛みのこと、退院までの準備などを整理することで、少しでも不安を和らげ、安心して手術に臨めるヒントになれば幸いです。

はじめに──手術前の不安は、誰にでもある自然な気持ちです

はじめに──手術前の不安は、誰にでもある自然な気持ちです

「眠っている間に終わるの?」「起きたときってどんな感じ?」「ちゃんと元通りに回復するのかな」手術を前にすると、こうした考えがふと湧いてくるものです。

不安になるのは、あなただけではありません。看護師として手術前の患者さんを何度も見てきましたが、「怖くない」と言い切れる人はほとんどいませんでした。

それでも、少しでも流れが見えてくると、緊張の表情がほんの少し緩む瞬間があります。そんな「先が見えない不安」を小さくするためのヒントをお伝えします。

「手術って痛いの?」「ちゃんと起きられる?」──手術のリアルQ&A

「手術って痛いの?」「ちゃんと起きられる?」──手術のリアルQ&A

手術の前に知っておくと安心につながることをいくつか紹介します。

Q1. 手術中って寝てるの?意識はあるの?

がんの手術では、ほとんどの場合全身麻酔で行われます。お腹や胸など深い部分を扱う手術が多いため、意識がある状態では痛みを十分に抑えられないことがあるからです。

全身麻酔では意識は完全になくなり、痛みを感じることもありません。呼吸や血圧などは麻酔科医が常に管理しているので安心です。

一方、皮膚の一部を切除する小さな手術などでは、「局所麻酔や区域麻酔(部分麻酔)」が使われることもあります。どの麻酔を使うかは、手術の内容や体の状態に応じて医師が判断します。不安な場合は、事前に麻酔の説明で「眠っている間に手術は終わりますか?」と聞くと安心です。

Q2. 麻酔はどんな種類があるの?目覚めないことはないの?

手術で使われる麻酔には、大きく分けて全身麻酔・局所麻酔・区域麻酔の3種類があります。

がんの手術では、多くの場合、全身麻酔が使われます。全身麻酔は眠った状態で手術を行うため、手術中の痛みや意識はありません。局所麻酔や区域麻酔は、手術部位だけを麻酔して起きたまま行う方法です。

全身麻酔については、「目覚めないのでは?」と不安になる方もいますが、麻酔は手術時間に合わせて管理されるため、多くの方は予定通り覚醒します。また、麻酔中は麻酔科の医師と看護師が常に状態をチェックしており、安全管理が徹底されています。

さらに、術後の吐き気やだるさなどの軽い症状が出ることがありますが、多くの場合は時間の経過とともに回復します。麻酔について不安なことがあれば、手術前に医師や麻酔科スタッフに相談することが安心につながります。

Q3. 手術後の痛みはどれくらい続くの?

手術後の痛みは、多くの場合術後1〜3日がピークです。その後は徐々に落ち着いていきますが、完全になくなるまでには数週間から数か月かかることもあります

痛みの感じ方には個人差があり、手術の部位や範囲によっても違います。痛みを我慢すると、呼吸が浅くなったり、体を動かしにくくなったりして、回復が遅れることがあります。

そのため、痛みは我慢せず、看護師や医師に遠慮なく伝え、必要に応じて鎮痛剤を使うことが大切です鎮痛剤を上手に使うことで、体への負担を減らし、回復をスムーズに進めることができます。

Q4. 回復にはどのくらいかかる?退院までの流れを知りたい

手術後の回復には個人差がありますが、一般的な目安としては、入院期間は1〜2週間前後です。ただし、手術の規模や方法、体調、合併症の有無によって異なり、数週間以上かかることもあります。

入院中は、術後の経過を確認しながら、少しずつ食事や歩行などのリハビリが始まります。退院後も、体力の回復には時間がかかることが多く、日常生活の動作や仕事に復帰するまでには、個人差があります。

いずれの場合も、無理をせず、体の声を聞きながら回復を進めることが大切です。医師や看護師の指示に従いながら、少しずつ生活に戻していきましょう。

Q5. 手術のリスクや合併症はどれくらいあるの?

手術後には、体の回復に伴ってさまざまな症状や合併症が起こる可能性があります。一般的に知られている合併症の例は次の通りです。

  • 痛み:術後1〜3日がピーク。歩行やリハビリに支障がある場合は、我慢せず医師や看護師に伝えて痛み止めを使用しましょう。
  • 出血:手術部位や内臓で起こることがあります。血圧低下や貧血の症状があればすぐに報告してください。
  • 創部の感染:赤み・腫れ・膿など異常があれば、医師や看護師に相談。指示に沿って創部を清潔に保つことが大切です。
  • せん妄:一時的に混乱や見当識の低下が起こることがあります。症状が強い場合はすぐ相談しましょう。
  • 深部静脈血栓症・肺塞栓症:長時間動かないことで血の塊ができることがあります。むくみや胸の痛み、息切れを感じたら報告してください。
  • 肺炎:術後の痛みで十分に咳や痰を出せない場合、肺に炎症が起こることがあります。咳・痰・発熱など異常があれば医療スタッフへ。
  • 麻酔による副作用:吐き気・嘔吐・寒気・のどの痛みなどが起こることがあります。多くは時間の経過とともに改善しますが、必要に応じて薬で軽減可能です。

また、手術の種類や部位によって、ここに挙げた以外の症状や注意すべき合併症が起こる場合もあります。体調や変化に少しでも不安を感じたら、遠慮せず医療スタッフに相談することが安心して回復に向かうポイントです。

Q6. 手術前に食事や薬で注意することはあるの?

手術前は基本的に禁飲食です。一般的な流れは以下の通りです。
・手術前日:夕食までは通常通り。夕食後は禁食(水は少量可の場合あり)
・手術当日:原則として朝から飲食禁止

薬の管理も重要です。特に注意すべき点は以下です。
・血液をさらさらにする薬(抗血小板薬・抗凝固薬など)は出血リスクが高く、手術が延期になる場合がある
・服用中の薬については、必ず医師や看護師の指示に従うこと
・自己判断で中止せず、疑問があれば事前に医師に相談する

安全に手術を受けるため、食事や薬の管理は指示通りに行うことが大切です。

Q7. 「怖い」と感じる気持ち、どうしたら落ち着く?

手術前に不安や恐怖を感じるのは、ごく自然なことです。「本当にうまくいくのだろうか」「思ったより痛かったらどうしよう」と、心配になる方は少なくありません。

こうした気持ちは、無理に抑え込もうとする必要はありません。家族や友人、医療スタッフに話すことで、気持ちが整理され落ち着くことがあります。また、事前に疑問点や不安なことを医師や看護師に相談しておくと、手術の流れや痛みの管理方法が理解でき、心の準備がしやすくなります。

深呼吸や軽いストレッチ、好きな音楽を聴くなど、リラックスできる時間を少し作ることもおすすめです。少しずつ「できること」を増やすことで、怖さや不安が和らぎ、手術に前向きに臨む助けになります。

Q8. 家族は手術時、どんなサポートができる?

手術前後で家族のサポート内容は変わります

<手術前>
・患者の不安な気持ちを聞いてあげる
・着替えや薬の準備を手伝う
・病院への移動や入院手続きのサポート

<手術後>
・日常生活の補助(食事・入浴・移動など)
・服薬のサポートや通院の付き添い
・患者の体調や気持ちの変化を観察して、必要に応じて医療者に報告

家族の関わりがあるだけで、患者の安心感は大きくなります

Q9. 手術後、どのくらいで日常生活に戻れるの?

手術後は体に大きな負担がかかるため、まずは体調に合わせてゆっくりと回復することが大切です。回復の流れはおおむね次の通りです。

1.手術直後〜1日目
・麻酔から覚めた後、呼吸や血圧などの体の状態を確認
・痛みがある場合は薬で調整
・水分や食事は医師の指示に従い少しずつ開始

2.数日後〜歩行開始
・少しずつ体を動かすリハビリを開始
・トイレや歩行など日常動作を無理なく取り入れる
・食事も段階的に増やして体力回復をサポート

3.退院前後
・体調が安定し、歩行や食事に問題がなければ退院可能
・自宅での生活に備え、薬や食事、運動の注意点を確認
・退院後も定期的な診察で回復の経過を見守る

回復のスピードは人それぞれです。焦らず、自分の体のペースに合わせて日常生活に戻していくことが安心です。

まとめ|不安を抱えながらでも、一歩ずつ進んでいけば大丈夫

まとめ|不安を抱えながらでも、一歩ずつ進んでいけば大丈夫

「手術って痛いのかな…」「麻酔から目が覚めるか不安…」「退院後、日常生活に戻れるかな…」と感じるのは、誰もが抱く自然な気持ちです。無理に一人で抱え込まず、医療者のサポートを受けながら、少しずつ準備を進めていきましょう。

手術の流れや麻酔の種類、術後の痛みや回復の目安を知っておくことは、心の負担を軽くする大切なポイントです。疑問や不安は遠慮せず相談することで、安心して手術に臨めます。

術後は体に大きな負担がかかるため、無理せず休養をとり、少しずつ日常生活に戻ることが目標です。

痛みや出血、体調の変化はすぐに医療者に伝え、必要なサポートを受けることで、回復もスムーズになります

焦らず自分のペースで進め、頼れる医療者やサポートを活用することで、少しずつ安心して過ごせる時間を増やしていきましょう。

※本記事は医療専門ライターによる寄稿であり、診療行為・医師の個別見解を示すものではありません。治療に関するご不安は、必ず主治医にご相談ください。