「エアコンは体に悪い」はもう古い?現代の熱中症対策を総まとめ

近年、猛暑のたびに耳にする「熱中症」。一昔前までは「真夏のグラウンドで起こるもの」というイメージが強く、スポーツや屋外作業と結びつけて考えられがちでした。しかし今では、エアコンのある室内でさえ熱中症のリスクがあるということが、医療現場でも広く知られています。

また、熱中症の症状は“のどが渇く”“汗をかく”だけではありません。めまい、頭痛、意識障害などの深刻な症状が現れることもあり、放置すれば命に関わるケースもあります。

この記事では、そんな熱中症の重症度分類(I〜IV度)や、症状に応じた正しい対処法、そして「クーラーは体に悪い」といった古い常識を見直すべき理由について、わかりやすく解説していきます。

大切な人を守るためにも、正しい最新の知識をアップデートしましょう。

熱中症とは?「昔の常識」では防げない理由

熱中症とは?「昔の常識」では防げない理由

「熱中症=真夏の炎天下で起こるもの」という考え方は、今の時代では通用しません。実際には、屋内でも起こり、気づきにくく、進行も早いのが現代の熱中症の特徴です。

ここではまず、いま私たちが持っている“古い常識”と、“本当の危険性”のギャップを整理しておきましょう。

  • 昔の熱中症=炎天下のスポーツ、今の熱中症=室内でも危険
  • 「クーラーは体に悪い」は間違い。今は“つけっぱなし”が推奨されることも
  • 高齢者や乳幼児が危険な理由

一つ一つ見ていきましょう。

昔の熱中症=炎天下のスポーツ、今の熱中症=室内でも危険

以前は、熱中症というと「炎天下での運動中に倒れる」といったイメージが一般的でした。しかし最近は、住宅の中や通勤中の車内、さらには夜間の寝室でも熱中症が起こることが報告されています。

特に湿度が高く、風通しが悪い環境では、体温調節がうまくいかず、室内でも体に熱がこもりやすくなります。「外に出ていないから安心」とは限らないことを覚えておきましょう

「クーラーは体に悪い」は間違い。今は“つけっぱなし”が推奨されることも

「冷房をつけっぱなしにすると体に悪い」「電気代がもったいない」という考えで、暑い中クーラーを我慢する方もまだ多く見られます。しかし、それは昔の常識であり、今ではリスクを高める行動といわれています。

高齢者や子どもがいる家庭では、室温28℃(エアコン自体の設定温度ではなく、あくまで室温)を超える場合は冷房を適切に使用することが推奨されています。最近では「夜間もつけっぱなしで寝る方が安全」とする医師の意見もあり、健康を守るうえでのエアコン活用が見直されています。

高齢者や乳幼児が危険な理由(温度感覚の鈍さ、脱水しやすさ)

熱中症のリスクが特に高いのが高齢者と乳幼児です。共通しているのは、「自分で暑さや脱水に気づきにくい」という点です。

  • 高齢者は体温調節機能が低下しており、暑さを感じにくい
  • 乳幼児は体が小さいため、少しの脱水でも急激に悪化しやすい

また、どちらも自分で水分を積極的にとることが難しく、周囲のサポートが不可欠です。体調の変化にすぐ気づけるよう、日頃から注意を向けておくことが大切です。

重症度分類で見る熱中症の進行(I度〜IV度)

重症度分類で見る熱中症の進行(I度〜IV度)

熱中症は、気づかないうちに進行し、重症化することがあります。そのため、症状の程度に応じた「重症度分類(I度〜IV度)」を知っておくことは、正しい対応と早期発見のカギになります。

ここでは、それぞれのレベルの主な症状と、現場での判断ポイントについて紹介します。

  • I度|めまい・立ちくらみ・こむら返り(軽度)
  • II度|頭痛・吐き気・だるさ・応答の鈍さ(中等度)
  • III度|意識障害・けいれん・高体温など(重度・救急要)
  • IV度|ショック・多臓器不全など(極めて重篤)【※2024年新設】
  • それぞれのレベルで何をすべきか

それぞれ紹介していきます。


参照:朝日新聞『熱中症、頭痛や吐き気の重症度は? 救急医学会、最重症の分類を新設』

I度|めまい・立ちくらみ・こむら返り(軽度)

熱中症の初期段階である「I度」は、比較的軽い症状が中心です。

  • めまい・ふらつき
  • 一時的な失神
  • 足がつる(こむら返り)
  • 大量の発汗

この段階では、体温調節機能が乱れ始めているサインです。涼しい場所での休息、水分・塩分の補給、衣類の調整など、早めの対処で回復可能です。

II度|頭痛・吐き気・だるさ・応答の鈍さ(中等度)

中等度の熱中症では、体調の異変がはっきりと現れてくる段階です。

  • 頭痛
  • 吐き気・嘔吐
  • 全身のだるさ
  • 呼びかけへの反応が鈍い
  • 体温の上昇(37~39℃)

このレベルでは、自己判断での対応は危険なこともあります。できるだけ早く医療機関を受診するか、状況に応じて救急搬送を検討する必要があります

III度|ショック・多臓器不全など(極めて重篤)

重度な「III度」は、生命に関わる状態です。すぐに119番通報し、救急搬送が必要です。

  • 意識がもうろうとする・昏睡状態
  • けいれん
  • 高体温(40℃以上)
  • 呼吸が不安定になる
  • 肝臓・腎臓などの臓器障害

この段階では、すぐに119番通報し、救急搬送が必要です。現場では冷却や体位管理などの応急処置を行い、医療機関での迅速な治療が求められます

IV度|意識障害・けいれん・高体温など(重度・救急要)【※2024年新設】

日本救急医学会では2024年より、これまでのIII度でもカバーしきれなかった重篤なケースに対応するため「IV度」が新設されました。

主な症状:

  • 血圧の低下や意識消失を伴うショック状態
  • 呼吸・循環の著しい異常
  • 多臓器不全(MODS)や、心停止寸前の状態

この段階では、ICUでの集中治療が不可欠です。すぐに119番通報し、救急隊に「ショック状態」「反応なし」などの情報を明確に伝えましょう。また、搬送までの間に冷却・体位管理を継続することが重要です。

それぞれのレベルで何をすべきか

重症度 主な症状 推奨される対応
I度(軽度) めまい、発汗、こむら返り 涼しい場所で休む/水分・塩分補給
II度(中等度) 頭痛、嘔吐、だるさ、反応の鈍さ 医療機関の受診を検討/意識確認を継続
III度(重度) 意識障害、けいれん、高体温 すぐに119番通報/冷却・体位管理を実施
IV度(極めて重篤) ショック状態、多臓器不全、血圧低下 ICUでの高度治療が必要/直ちに救急搬送

早めに兆候を察知し、段階に応じた対応をすることが、重症化のリスクを下げる一番のポイントです。

いざというときの応急処置・対処法

いざというときの応急処置・対処法

熱中症は段階的に進行し、最悪の場合は命に関わる状態(IV度)にまで至ることもあります。

ここでは、軽症(I度)から極めて重篤なIV度までを見据えた、即時対応のポイントを整理し、安全に対処するための実践的な対策をご紹介します。

  • すぐできる応急処置
  • 救急車を呼ぶ判断ポイント
  • 家族・職場・学校でできる備えと連携のコツ

一つ一つ紹介していきます。

すぐできる応急処置

熱中症の症状が出たら、以下の3ステップを速やかに行いましょう:

  1. 涼しい場所へ移動
    屋外なら日陰へ、室内なら風通しの良い空間や冷房の効いた部屋へ。
  2. 体を冷やす
    衣服を緩めて冷房・扇風機を当てるか、氷袋や水を湿らせたタオルを首や脇の下に当てて冷却。
  3. 水分と塩分の補給
    経口補水液がベストですが、なければスポーツドリンクでもOK。飲める状態であればゆっくりと。

これらは軽症(I度)~中等症(II度)に有効です。III度以上では応急処置だけでは限界があるため、救急要請を優先しましょう自己判断の難しさを意識しつつ、早期段階での初期対処が重症化を防ぐカギになります。

救急車を呼ぶ判断ポイント

以下の症状がある場合は、迷わず119番へ:

  • 意識障害や反応の鈍さ
  • けいれんがある
  • 体温が40℃以上
  • 自力で水分補給ができない
  • 胃腸症状(嘔吐・下痢)で水分が摂れない

意識障害やけいれんはIII度以上(重度〜極めて重篤)のサインである可能性があります。特に、血圧の低下やショック状態が見られる場合はIV度の疑いがあるため、迷わず救急搬送を要請してください

家族・職場・学校でできる備えと連携のコツ

熱中症を防ぐためには「周囲のサポート」と「初動の共有」が大切です。

  • 日常の温度チェック:特に高齢者や子どもにとって、室内の温度管理が重要
  • 症状を決めつけない:「今日はだるそう」「ちょっとぼんやり?」などの小さな変化にも注意
  • 冷却と補給の迅速な実行:現場での応急処置役割を事前に決めておく
  • 緊急連絡・搬送手順の確認:連絡先や救急車要請の流れを家族・スタッフ間で共有
  • 復帰計画を考える:症状が落ち着いたあとも、無理のない復帰に向けたスケジュールを設ける

もしもに備えて、対応フローを事前に確認しておくことで、「あってはならない事態」でも冷静に動ける準備になります。特に最近では、従来のIII度では分類しきれない「IV度(極めて重篤)」の状態も考慮されるようになっています。

いざというときに命を守る行動が取れるよう、ショック症状などへの初期対応フローも含めて、事前の備えを徹底しましょう。

よくある誤解Q&A|「熱中症対策の落とし穴」

よくある誤解Q&A|「熱中症対策の落とし穴」

Q1. 「暑いけど、汗をかいてないから大丈夫?」
A.危険です
汗をかいていない=涼しい、ではなく、汗が出ない=重症のサイン
である場合もあります。特に高齢者は汗をかきにくく、脱水に気づきにくい傾向があります。

Q2. 「エアコンのつけっぱなしは体に悪いのでは?」
A.今は“つけっぱなし”が推奨されるケースもあります
冷房は命を守る手段です。28℃(エアコン自体の設定温度ではなく、あくまで室温)以下に保ちつつ、風を循環させるのがポイントです。体調が悪くなるのは“冷やしすぎ”や“乾燥”が原因であることが多く、設定温度の調整が大切です。

Q3. 「屋内にいるなら熱中症にはならないよね?」
A.
室内でも熱中症は十分に起こります
特に風通しが悪い、湿度が高い部屋では要注意です。実際に救急搬送される熱中症患者の多くは、自宅や施設の室内で発生しています。気温だけでなく、湿度や風通し、換気の悪さもリスクになります。

Q4. 「水さえ飲んでおけば大丈夫?」
A.
水だけでは危険な場合もあります
大量の汗をかくと塩分も失われます。スポーツドリンクや経口補水液などで、ナトリウムも一緒に補うのが正解です。

Q5. 「1日3回くらい水を飲めばOK?」
A.喉が渇く前に、こまめな水分補給が大切です
1回にたくさんではなく、1〜2時間ごとに少しずつ飲みましょう。特に起床時・外出前・入浴前後・就寝前は水分補給のタイミングとして意識しましょう。

Q6. 「帽子をかぶっていれば熱中症は防げる?」
A.
外出時の帽子は効果的ですが、万全ではありません
体に熱がこもらないよう衣類や行動も調整し、こまめな休憩と水分補給をセットにすることが重要です。

Q7. 「若い人は熱中症にならない?」
A.
年齢に関係なく誰でも熱中症になります
体力がある若い人でも、無理をすると一気に重症化することもあります。特に運動部や建設現場などで過信は禁物です。重い症状(IV度)に至るケースは、高齢者だけでなく、無理を重ねた若年層にも見られます。「自分は平気」という油断が一番危険です。

まとめ|熱中症の危険を見落とさないために、備えておきたい知識とは?

まとめ|熱中症の危険を見落とさないために、備えておきたい知識とは?

熱中症は、暑さの中で突然起こるだけでなく、「気づかないうちにじわじわ進行している」ことが多い病気です。昔の常識にとらわれていると、リスクを見過ごしてしまうことも少なくありません。

この記事では、以下のポイントを中心に解説してきました:

  • 熱中症は屋内でも起こる。冷房の適切な使用が命を守る
  • 症状の重さによって対応が異なる(I度~IV度)
  • 2024年からは「IV度(極めて重篤)」という新分類も導入されている
  • 早期の対応と応急処置が、重症化を防ぐカギ
  • 高齢者・子ども・持病のある方は特に注意が必要
  • 「汗をかかない=危険」など、誤解や思い込みは予防の妨げになる

これらを知っておくだけでも、いざというときの判断や行動が変わります。

特別なスキルがなくても、「正しい情報を知っておくこと」自体が一番の備えです。ご自身や家族、大切な人の健康を守るためにも、日頃から意識しておきたいですね。

 

▶関連記事

【医師が考察】がん治療をサポートする酸素ナノバブル水の研究と未来展望