白血病と日常生活|副作用や体調に合わせた無理のない工夫
白血病と診断されると、ご本人もご家族も大きな不安や戸惑いを抱えることでしょう。「これからの生活はどうなるのか」「治療中にどんなことに気をつければよいのか」――そうした疑問や不安を持つのは自然なことです。
近年は治療の進歩によって、化学療法や移植を受けながら日常生活を続けられる患者さんも増えています。その一方で、感染症への注意や体調管理など、日常の中で工夫が欠かせません。
本記事の執筆者は、大学病院で看護師として白血病患者さんのケアに携わってきた経験を持つ医療ライターです。診断直後の患者さんやご家族から寄せられた「日常生活で何に気をつければいいのか分からない」という声に寄り添ってきました。
この記事では、白血病と日常生活の基本的なポイントから、治療中・移植後の工夫、家族のサポート、仕事や学校との両立までをわかりやすく解説します。ご本人だけでなくご家族も、少しでも安心して毎日を過ごせるよう、参考になれば幸いです。
目次
白血病と日常生活|まず知っておきたい共通ポイント

白血病と日常生活|まず知っておきたい共通ポイント
白血病の治療や経過には個人差がありますが、どの患者さんやご家族にも共通して意識しておきたい生活上のポイントがあります。基本を押さえておくことで、予期せぬ体調の変化にも落ち着いて対応しやすくなります。
ここではまず、白血病と日常生活において共通して大切となるテーマを見ていきましょう。
- 症状や日常生活への一般的な影響
- 感染症や体調管理の基本
これらを理解しておくことが、その後の生活の工夫や家族のサポートにつながります。
症状や日常生活への一般的な影響
白血病では、血液の異常により、次のような症状が出やすくなります。
・感染しやすくなる
・出血しやすくなる(歯ぐきの出血やあざなど)
・貧血になりやすくなる(だるさ、動悸、めまいなど)
さらに、抗がん剤による化学療法では、次のような副作用が加わることがあります。
・吐き気や嘔吐
・脱毛
・口内炎
・下痢や便秘
これらの症状や副作用の影響で、食事がとりにくくなったり、熱が下がりにくかったり、夜よく眠れないこともあります。また、貧血や倦怠感のため、体を動かすのがつらくなったり、集中力が続きにくくなることもあります。
こうした変化は、心と体の両方に負担を与えます。だからこそ、無理のない生活リズムを意識すること、そして周囲の理解やサポートを得ることが大切です。
感染症や体調管理の基本
白血病では、治療中や治療後も、血液の状態が安定するまで感染症の予防や体調管理がとても大切です。白血病の患者さんは、一般の方よりも感染しやすく、感染すると重症化しやすいため、注意が必要です。
1.日常生活でできる基本的な対策
・手洗い・うがいをこまめに行う(流水+石けん、外出後はアルコール消毒も有効)
・人混みを避ける
・必要に応じてマスクを着用する
2.体調の変化があったときの対応や予防
・発熱やせき、のどの痛みなどの体調変化があれば、すぐに医療機関に相談しましょう
・十分な休養とバランスのよい食事で体力を保つことも、感染予防につながります
こうした日常の工夫を意識することで、感染のリスクを下げ、安心して過ごすことができます。
化学療法中の日常生活の工夫

化学療法中の日常生活の工夫
白血病の化学療法中は、使っている薬の種類や体調によって、副作用や体調の変化の出方に個人差があります。それでも、どの患者さんやご家族にも共通して意識しておきたい日常生活の工夫があります。
ここでは、化学療法中の日常生活で特に大切なテーマを見ていきましょう。
- 副作用が出やすい時期の生活の工夫
- 体調に応じた無理のない運動や休養
- 家族と一緒にできる感染症対策
これらを理解しておくことで、体調の変化に合わせて無理なく生活を調整でき、安心して治療を続けやすくなります。
副作用が出やすい時期の生活の工夫
化学療法の副作用は、出やすい時期がおおまかに決まっています。時期ごとの特徴を理解しておくと、日常生活の工夫や対策がしやすくなります。
1.治療当日〜数日以内に出やすい副作用
・アレルギー反応・血管痛・発熱
アレルギーが出やすい薬では事前に抑える薬を使用します。症状が出た場合はすぐに医療スタッフへ報告しましょう。
・吐き気・嘔吐
食事の30分〜1時間前に吐き気止めを服用することで軽減できることがあります。少量ずつ、消化にやさしい食事を心がけましょう。
2.治療から1週間前後に出やすい副作用
・骨髄抑制(白血球減少・貧血・血小板減少)
感染症にかかりやすくなるため、手洗い・うがい・マスク、人混みの回避が重要です。めまいやふらつきにも注意しましょう。
・疲れやすさ・だるさ・食欲不振
無理のない生活リズムを意識し、十分に休養を取りましょう。食事は少量でも食べられる時に摂ることが大切です。
3.治療から2週間前後〜長期に出やすい副作用
・口内炎・下痢・便秘・胃もたれ
治療開始からうがいを継続することで口内炎の予防に役立ちます。食事は柔らかく刺激の少ないものを選び、水分補給をしっかり行いましょう。下痢のときはウォシュレットも有効です。
・脱毛・皮膚の変化(乾燥・しみ)・手足のしびれ
治療前に髪を短めに整えておくと、抜け始めた際の負担が軽くなります。皮膚は保湿を意識し、刺激や出血に注意が必要です。
・膀胱炎・腎障害
一部の薬剤で起こる可能性があるため、水分をこまめに摂り、尿の異常があれば早めに医療機関へ相談してください。

参照:株式会社メディカルエデュケーション「がんの基礎トレーニング」
体調に応じた無理のない運動や休養
白血病の治療中は、抗がん剤の影響で体調に波があり、横になって過ごす時間が多くなることもあります。筋力は1週間寝たきりで10〜15%落ち、回復には約1か月かかるとも言われています(年齢や基礎体力等で異なります)。そのため、できる範囲で体を動かし続けることが大切です。
無理のない範囲でできる運動の例は次の通りです。
・病院内や自宅で少し歩く
・軽くスクワットを行う
・立つのが難しいときは、ベッドに座って足踏みをする
また、座って過ごす時間を意識的につくることも、体力維持に役立ちます。
一方で、体調が優れないときは無理せず休養をとることも重要です。白血病の治療は長期にわたるため、運動と休養のバランスを意識しながら、無理なく継続していきましょう。
家族と一緒にできる感染症対策
白血病は通院中でも入院中でも、治療中は感染症にかかりやすくなります。そのため、家族も一緒に感染予防を行うことがとても大切です。
基本的な対策の例は次の通りです。
・手洗い・うがいの徹底
・外出時のマスク着用
・人混みを避ける
・家の換気やエアコン等の清掃
家族も体調に変化があれば、すぐに医療機関に相談しましょう。こうした工夫を家族みんなで少しずつ取り入れることで、患者さんへの感染リスクを減らすことができます。安心して過ごせる環境作りを、家族で協力して行っていきましょう。
移植後の生活|安心して過ごすためのポイント

移植後の生活|安心して過ごすためのポイント
白血病の移植後は、免疫力がまだ十分に回復していない時期が続き、体調に波が出やすくなります。そのため、日常生活の工夫や周囲のサポートがとても大切です。
ここでは、移植後の生活で特に意識してほしいポイントを見ていきましょう。
- 免疫力が低い時期の生活上の工夫
- GVHDの症状に合わせたケアと日常の工夫
- 外出や人付き合いを安心して楽しむ工夫
- 通院・薬の管理をスムーズに行うコツ
これらを理解し、日々の生活に取り入れることで、移植後も安心して過ごせる環境を作ることができます。
免疫力が低い時期の生活上の工夫
移植後は、血液が回復しても免疫力が低い状態が続きます。この時期は感染症にかかりやすいため、少しの工夫で安心して過ごせる生活を心がけることが大切です。
たとえば、こんなことが役立ちます:
・水回りの清掃やゴミ出しは家族と協力して行う
・ペットと触れ合うときは、マスクや手袋を使う
・室内の観葉植物は、外に出したり他の人に管理してもらう
・食事は加熱済みで清潔なものを選ぶ
・水を飲む際、水道水なら煮沸する、もしくは購入した水を飲む
これらはほんの一例です。食器や手の衛生に気をつけたり、栄養バランスのとれた食事を心がけることでも、感染リスクを下げて体力を保つことができます。
移植後は体力が落ちやすいため、日常生活のちょっとした工夫が役立ちます。ある患者さん(骨髄移植後の方)は、酸素ナノバブル水を取り入れたところ、血中酸素濃度が改善し、疲れやすさが軽減したと感じたそうです。体調管理の一例として参考にしてみてください。
こういった工夫を家族と一緒に少しずつ取り入れることで、安心して日常生活を送れる環境を作れます。
GVHDの症状に合わせたケアと日常の工夫
移植後に起こるGVHD(移植片対宿主病)は、症状の部位や重さに応じて日常生活での工夫が変わります。
ここでは、急性GVHDと慢性GVHDの代表的な症状とその対応を簡潔にまとめました。
- 急性GVHD
・皮膚(発赤・脆弱化):刺激の少ない服、こまめな保湿
・消化管(吐き気・食欲低下・下痢):刺激を減らす工夫
・食事:消化に良く、刺激の少ない食品
・水分補給:下痢などによる脱水を防ぐ
・医療機関への相談:症状が悪化したり新しい症状が出た場合
- 慢性GVHD
・皮膚:保湿で乾燥・硬化を予防
・紫外線:帽子や日焼け止めで外出を調整
・口腔:丁寧な歯磨きとうがい
・眼:乾燥がつらい場合は点眼
・食事:刺激の少ない食品(辛い物は避ける等)
・水分補給:口腔乾燥を防ぐためもこまめに摂取
・医療機関との連携:症状や体調の変化があれば相談
外出や人付き合いを安心して楽しむ工夫
一時退院中や治療後の退院時、やっぱり外の空気を吸ったり、人と会ったりする時間は大切ですよね。免疫力は回復の途中なので感染予防は意識しつつ、「安心して楽しむコツ」を押さえておきましょう。
- 公共交通機関を使うときは、混雑する時間を避ける。
- マスクを着用し、帰宅後は手洗いやうがいでリフレッシュ。
- 強い日差しを避けて、日焼け対策をしておく。
- 外出は長時間よりも短時間で、無理のない範囲に。
- 人と会うときは大人数ではなく、親しい人と少人数で。
ちょっとした工夫を意識するだけで、安心感を持ちながら外出や人付き合いを楽むことができます。
家族のサポートとコミュニケーション

家族のサポートとコミュニケーション
白血病の治療や移植後は、体調の変化が急に起こることもあり、患者本人だけでなく家族も不安を感じやすい時期です。そんなとき、家族が支えとなることで、安心して日常生活を送ることができます。
ここでは、家族が意識したいポイントを具体的にまとめました。
- 生活環境を整えて安心感をつくる
- 気持ちのサポート・不安の共有
- 体調変化に気づいたときの安心対応
これらを理解し、日々の生活に取り入れることで、患者さんも家族も安心して過ごせる環境を作ることができます。
生活環境を整えて安心感をつくる
患者さんが自宅に戻るときは、住まいの環境を整えることが安心感につながります。家族も落ち着いてサポートできるよう、無理のない工夫を取り入れましょう。
具体的には、次のポイントが役立ちます:
・エアコンや水回りの清掃:特に水回りは細菌が繁殖しやすいため、こまめに清掃して清潔を保つ
・タオルやコップなどの共有物の管理:家族と分けて清潔に保つ
・生ものはできるだけ避ける:食中毒リスクを減らすため、調理や保存に注意
・換気をこまめに行う:室内の空気を清潔に保つ
・家族の禁煙:たばこの煙は感染症リスクや体調への影響があるため、家の中では控える
これらを意識することで、患者さんも家族も安心して過ごせる生活環境を作ることができます。
気持ちのサポート・不安の共有
白血病は再発のリスクもあり、退院後や通院での治療中も、副作用が続くことがあります。そのため、体調だけでなく精神的にも不安定になりやすい時期です。
患者さんが安心して日常を過ごせるよう、家族が意識できるサポートのポイントは次の通りです:
・話をじっくり聞く:不安や気持ちを吐き出せる場を作る
・体調や気分の変化に気づく:声をかけるだけでも安心感につながる
・無理に励まさず共感する:「大変だね」「つらいね」と寄り添う言葉をかける
・日常の小さな楽しみを共有する:好きな音楽や趣味などで気分転換をサポート
さらに、必要に応じて病院の心理士やカウンセラーなど、外部の専門家に相談することも安心につながります。また、家族自身の気持ちや負担も大切にしましょう。無理をせず、休息や趣味の時間を持つことで、患者さんへのサポートの質も高まります。
体調変化に気づいたときの安心対応
白血病の治療中や移植後は、体調の変化が少しずつ現れます。
慌てず安心して対応するために、次のポイントを意識しましょう:
・些細な変化も見逃さない:「最近眠れない」「お箸が持ちにくい」など、気になることは医療者に相談
・体調や症状を記録する:小さな変化でも伝えやすくなる
・症状が出たら主治医に相談:発熱などは感染症の可能性もあるため、受診の場所やタイミングを確認
・家族も観察する:日常的に気づくことで早期対応につながる
・安心できる環境を整える:休みやすい場所を作ると安心
これらを意識することで、患者さんも家族も安心して日常生活を送れます。
仕事・学校との両立

仕事・学校との両立
白血病の治療中や移植後も、可能な範囲で仕事や学校生活を続けたいと考える方は少なくありません。しかし、体調の変化や治療の予定に合わせて、無理のない調整が大切です。
ここでは、安心して両立するために意識したいポイントを具体的にまとめました。
- 治療に合わせた無理のない調整方法
- 周囲への伝え方と理解の得方
これらを理解し、日常生活に取り入れることで、体調に合わせながら安心して仕事や学校生活を続けられる環境を作ることができます。
治療に合わせた無理のない調整方法
白血病の治療中や移植後は、体調や治療スケジュールに合わせて無理のない調整が大切です。まずは短時間や週の少ない日数など、無理のない範囲で仕事や学校に行くことから始め、体調や慣れに合わせて徐々に活動時間や日数を増やしていきましょう。
他にも意識したいポイントは次の通りです:
・治療スケジュールを把握する:主治医と相談し、治療予定や副作用の可能性を理解しておく
・体調に合わせた活動量の調整:調子の良い日には軽めの作業や学習を行い、調子が悪い日は休養を優先
・休養と活動のバランスを取る:長時間の活動は控え、こまめに休憩を取り入れる
・周囲とコミュニケーションを取る:職場や学校の担当者に体調や治療の状況を伝えて理解と協力を得る
・支援制度の活用:必要に応じて医療機関や地域、職場の支援制度を利用する
これらを意識することで、治療と日常生活を無理なく両立しやすくなります。
周囲への伝え方と理解の得方
白血病の治療や移植後、仕事や学校に復帰することを考えると、不安や緊張で胸がいっぱいになることもありますよね。「体が思うように動かない自分」に落ち込んだり、「周りに迷惑をかけてしまうのでは」と心配になるのは自然なことです。
そんなときは、一人で抱え込まず、体調や気持ちに合わせて無理せず、周りのサポートを上手に活用することが大切です。
1.「できること・できないこと」を正直に伝える
・復帰したばかりの頃は、以前のように動けなかったり判断が鈍ったりすることがあります。
・無理に背伸びせず、体力や集中力に合わせて周囲に相談することで、安心して仕事や学びを続けられます。
2.必要なときは休む勇気を持つ
・移植後は免疫力が低い時期もあり、体調が安定しないことがあります。
・休むことは悪いことではありません。体を守るために必要な休息は、周囲の理解と協力を得ながら、安心して取りましょう。
3.新しい得意分野や自分の強みを見つける
・治療や休養をきっかけに、新しいことに挑戦したり資格を取ったりするのも一つの方法です。
・自分の今の体や環境に合った活動を見つけることで、社会とのつながりや役割を持ち続けられます。
移植後は長期にわたり体調や合併症の観察が必要です。上司や同僚の理解を得ながら、自分のペースで仕事や学業を進めましょう。病気や治療を通して得た自分の強さや経験も大切にしてください。
まとめ|今日からできる、安心と笑顔を両立する生活の工夫

まとめ|今日からできる、安心と笑顔を両立する生活の工夫
白血病の治療や移植後は、体調や気持ちが不安定になりやすく、「これまで通りの生活はできるのだろうか」「学校や仕事は続けられるのだろうか」と不安に感じる方も少なくありません。
大切なのは、正しい情報をもとに、自分に合った生活の工夫を少しずつ取り入れることです。体調に合わせた休養や感染予防、栄養管理など、無理のない範囲で実践することで、安心して日常を過ごせるようになります。
また、医療スタッフや相談窓口、心理士など頼れるサポートを活用することで、家族も本人も安心感を持ちながら生活できます。
治療や支援の選択肢は年々広がっており、少しずつ工夫を重ねることで、安心と笑顔を両立した日常を作ることができます。本記事が、そんな生活のヒントとして役立てば幸いです。
※本記事は医療専門ライターによる寄稿であり、診療行為・医師の個別見解を示すものではありません。治療に関するご不安は、必ず主治医にご相談ください。
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